ファーウェイ製の3つ折りスマホ「Mate XT」をしばらく使ってみたのだが、もはや文字では表現できないほど完成度が高くて驚いている。

購入したのはグローバル版でAndroidOSをベースにしたEMUI14を搭載。
今回は1ヶ月使ってみた感想、メリット・デメリットを筆者の視点からレビューしたい。
脅威の薄さ3.6mmを実現
まずは簡単にスペックを整理しながら外観を見ていこう。

「Mate XT」はKirin9010、ROM 1TB、RAM 16GB搭載のハイエンドで、6.4インチ(通常)、7.9インチ(2画面)、10.2インチ(タブレット)有機ELディスプレイを採用する。
5000万+1200万+1200万画素アウトカメラ、800万画素インカメラ、Wi-Fi a/b/g/n/ac/ax、顔・指紋認証、90Hzリフレッシュレート、NFC、ワイヤレス充電、EMUI14等に対応。

5G・グーグルに対応しないのが非常に残念であるが、米国の制裁下を考慮すれば申し分ないスペック。むしろ過去5年間にわたる制裁で心折れず、独自チップやディスプレイ開発を世界トップレベルまで発展させた努力に脱帽する。
そして特筆すべきはその脅威的な薄さである。

最も薄い部分は3.6mmしかなく、M4チップ搭載「iPad Pro13」の5.1mmをも凌いでいる。ここまで薄いと「折れてしまいそう」と思うだろう。

ただし折り曲げながら使うから破損の心配は不要。ちなみに同機種は最薄部4.2mmの「Galaxy Z Fold7」よりも薄く、現時点では世界最薄を誇っている。
おかげで外側に畳んでもカメラ部分より薄くなり、2画面スマホとしても抜群の使い心地を実現。

背面にディスプレイが回り込んでいるため、本体を握るとどうしても画面に手を触れる。最初は少し違和感を覚えるが、それでも扱いやすさは普通の2画面スマホそのもの。

しかも別記事で触れたように、グーグル系アプリはほぼインストール可能。通知もリアルタイムで受信できるため使っていて困ることはほとんどない。
もちろんスマホとしても優秀だ。画面比率19.9:9はごく普通のサイズ感。高さも156.7cmで扱いやすく、ディスプレイの発色は「Galaxy Z Fold7」よりも目に優しい。

アプリやUIの操作性はヌルヌル・サクサク。2年前の「Mate X3」では発展途上感のあったEMUIもだいぶ滑らかになった印象である。
キャッシュレス決済も基本的にQRコードを利用するか、楽天ペイアプリでVISA/Master/JCBタッチ決済を設定できた。日常生活を「Mate XT」1台だけで過ごすこともできそうだ。

いやぁ、実に快適!2020年以降、ファーウェイスマホは米国の制裁を受けてGoogleサービスのインストールが難しくなった経緯がある。
しかし先駆者たちが抜け穴を探しまくった結果、現在のアプリ環境は過去5年でもっとも使いやすく実用性を帯びている。
昨今はファーウェイ独自の「HarmonyOS Next」が主流になりつつあるが、グローバル版の本機はAndroidベースのEMUI14を採用。このことも使いやすさの一因と言えるだろう。
まるで全く新しいデバイス
ではフォルダブルとしての使い勝手はどうかというと最高そのもの。まるで「新しいジャンルの端末」という感覚である。
というのも、今までのフォルダブルは2画面が当たり前で、スマホとして使いながら7〜8インチの大画面に切り替えることができた。
一方で3つ折りはスマホ、2画面、10インチタブレットのほか、折り目を活用して電子書籍や新聞を楽しむなど、少なくとも4通りの使い方ができる点が新しい。


さらにアプリの並列も感動もの。片面だけフルサイズにしたり、2つのアプリを大画面にしたまま折り曲げることも可能。


本や新聞に折り目をつけると読みやすいように、タブレットも折り目をつけることでコンテンツに集中できるのは間違いだろう。

もちろん周囲に配慮したい場面では、左側も折り畳むことで2画面スマホに早変わり。従来のフォルダブルのように縦長アプリを並列して楽しむこともできる。

画面1/3をキーボード部分にして文字入力をしたり、折り目部分をスタンドにして動画を観たり、2画面フォルダブルよりも多くの使い方がある。

他にもリモートデスクトップ機能を使ってWindowsやMacOSを操作するなど、従来のフォルダブルでは難しかった使い方もありそうだ。

さらによくゲームをする人であれば、フルサイズにすることでコンテンツの臨場感を最大限に引き出すことができる。小さな画面とは比べ物にならないスリルがあり、好きな場所で広げられる楽しさが新たな価値体験を創造する。

このように1つのデバイスであるにも関わらず、変幻自在ぶりがスマホやタブレットの次元ではない。まるで新しいジャンルのデバイスを触っている感覚なのだ。
折り畳みスマホの概念である「閉じればスマホ、開けばタブレット」をここまで具現化し、フォルダブルの可能性を示してくれたデバイスは初めてではないだろうか。
デメリット:普段使いには慣れが必要
こうしたメリットがある一方で、もちろんデメリットも散見される。厚さ3.6mmという世界最薄のボディにも関わらず、3つ折りにすると結構分厚いということ。
片手で文字入力をするとズッシリした重みを感じたり、ベッドで寝ながら手にすると「よっこらしょ」と大掛かりな感覚がある。

さらに本体が分厚くて重いため、ズボンやジャケットのポケットが不格好になりやすい。使っているうちに慣れのだが、やはり普通のスマホではないことを自覚する必要がありそうだ。
それにしても3.6mmの超薄型ボディにも関わらず、閉じた状態でここまで分厚くなるのは意外。この点は3つ折りスマホの課題と言えるだろう。
3つ折りの時代は来るのか
ここからは完全に私見になるのだが「Mate XT」はフォルダブルの凄まじいポテンシャルを見せてくれた気がしている。
開いて閉じるだけの2画面から使い道が格段に広がり「真の折り畳みスマホ」と言わせる応用力を備えたわけだ。
おそらくフォルダブルの行き着く未来はここだろう。ただし耐久性、技術力、本体価格など様々な課題を抱えており、残念ながら2〜3年で普及するようなものではない。
2019年に登場した初代「Galaxy Fold」がそうだったように、幾つもの課題をクリアしながら4〜5年かけて徐々に存在感を高めていくだろう。
その頃にはアップルも参戦するなど、いよいよ折り畳みデバイスの新時代がやってくるかもしれない。
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