大手通信キャリアの経済圏争いが激化している。そもそも経済圏とは顧客の囲い込み戦略で、携帯電話回線、クレジットカード、銀行、証券会社等、複数のサービスを利用してもらう狙いがある。
条件が揃うと携帯電話料金が割引されたり、ECサイトで大量のポイントが貰えたり、通信キャリア毎に異なるメリットが揃っている。
この分野で圧倒的に先行していたのが楽天グループだ。同社のサービスを複数利用すると楽天市場のポイント還元率が最大18.5倍。筆者もこのシステムに魅了された一人で、楽天カード、楽天モバイル、楽天銀行を中心に長らく愛用してきた。

定期的なお買い物マラソンやゲリラ的なポイントアップ施策も面白く「経済圏構想で楽天を抜くことはできないのでは?」と考えていた。ところがタイトルにもある通り、近年ソフトバンクの追随が凄まじい。
今回は筆者の視点でその凄まじさを解説したい。
LINEとPayPayで経済圏の入口を確保
まずソフトバンク経済圏に欠かせないのがLINEとPayPayの存在だ。2012年にスタートしたLINEアプリのユーザー数は2026年1月29日時点で1億人を突破。アクティブユーザーは9900万人と言われており、スマホを持たない子どもやお年寄りを除いてもほとんどの日本人が利用している。

ソフトバンクは好きなタイミングで自社サービスの広告をLINEアプリに配信可能。後述するが課金したくなる仕組みやヤフーショッピングへの導線を強化しており、ソフトバンク経済圏への入口として大切な役割を担い始めている。
そしてもうひとつがPayPayだ。2018年にコード決済で先行した同規格は現在ユーザー数が2026年8月10日時点で7500万人を突破。送金機能は国内シェア99%を獲得しており、LINEのように今後8,000万人、9000万人と国内ユーザー数を伸ばしていく可能性が高い。

LINEもPayPayもソフトバンクのサービスだが、ドコモ、au、楽天モバイルのユーザーももはや無意識のうちに利用している。連絡手段と決済手段で覇権を取ったことで経済圏の入口を確保したといっても過言ではないのだ。
ヤフーショッピングへの導線が凄まじい
この入口は自社のECサイト「ヤフーショッピング」に繋がっている。国内のECサイトといえばアマゾンと楽天が大きなシェアを握っているものの、ここ数年の猛追は目を見張るものがある。特に注目すべきがLINEとPayPayアカウント連携による還元率アップだ。

携帯電話回線やクレジットカードがない人でも毎日5%還元になるため、ソフトバンク回線やPayPayカードを持たなくても気軽に参加できる。この誰でも大幅ポイントアップというのが楽天市場と大きな差別化ポイントで、7500万〜1億人の潜在的な顧客を抱えている。
気になった商品の再入荷や実施中のキャンペーンはLINEアプリに随時配信。ECサイトとLINEをうまく連携させることで効率的な売上アップまで計算されているのだ。
Netflixと連携:掛け捨てではないLYPプレミアム
そしてここからはダメ押しの話となる。ソフトバンクには「LYPプレミアム」という月額508円の有料サブスクが用意されており、加入すると以下の特典が受けられる。
・ヤフーショッピングで毎日2%UP、会員限定特価商品
・LINEの有料スタンプ使い放題
・LINE特別機能(ミュート送信、相手に気づかれずに送信取消、プレミアムバックアップ等)

ソフトバンクとワイモバイル回線を持つ人は無料。これまではヤフーショッピングをお得に使いたい人やLINEスタンプを購入するのが嫌な人に一定の需要があったものの、まったく使わない月は掛け捨てになる可能性もあり、訴求力に欠けるものがあった。
しかし2026年2月に「Netflix」との連携を発表。月額890円の「Netflix」広告スタンダード付きプランとLYPプレミアムがセットになったのである。

これでLINEの特別機能からヤフーショッピングの大幅ポイントアップまで網羅することになり、買い物をしない月も掛け捨てで終わる心配もほぼなくなった。
日本国内に1000万人を抱えるNetflixユーザーだけでなく、NetflixやLYPプレミアム単独での加入をしていた層がこれを機に契約すると一気にソフトバンク経済圏に流れてくるだろう。
今後はリアル店舗にも進出か
このようにソフトバンクはLINEとPayPayアプリを使ったヤフーショッピングへの導線が強く、自社の携帯電話回線やクレジットカードを持たない顧客も大幅ポイントアップの対象。この点が楽天や他社の経済圏に差をつけた。
例えば「携帯電話は1,000円以下の格安SIMを使っている。でもNetflixは加入しているしLYPプレミアムが実質無料。だから買い物はヤフーショッピングでPayPay支払いをしている。」という人がこれから増えるのではないだろうか。

さらに7月31日、ソフトバンクとPayPayはセブンイレブンを展開するセブン&アイ・ホールディングスに1000億円ずつ出資を発表。2027年までにPayPay IDと7iDの統合を目指しており、この経済圏をリアル店舗に展開することも目論んでいる。
もちろん、この分野で先行した楽天経済圏も健在だ。ただし楽天市場のポイントアップは楽天モバイル回線の保有が大前提。プラチナバンド普及の遅れで電波状況が改善しなければ、痺れを切らして他の経済圏に移行する人が出てきても不思議ではないだろう。
ドコモは銀行と証券会社を買収したことで体勢を整えており、KDDIもクレジットカードや銀行の利用で通信料金の実質価格を安くするなど競争が激化している。ただし、やはり勢いとしてはソフトバンクが頭一つ抜きん出ているといえないだろうか。


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